義母が編んだ、白い半袖のサマーセーター。身頃にも袖にも透かし模様が入り、丸い衿ぐりと短い袖が、すっきりとした形をつくっています。
2023年7月にInstagramへ載せたとき、すでに二十年以上前の作品だと聞いていました。へたった様子がなく、仕上げもきれいで、当時の投稿にはその驚きがそのまま残っています。
時間がたっても、目が留まるところ
二十年以上という時間は、編み機を手放したのがおよそ二十年前だった、という話からわかったことです。制作した年が正確にわかっているわけではありません。それでも、目の前の服と、作られてから過ぎた時間との間に、少し意外な隔たりがありました。
写真で見ると、まず目に入るのは透かし模様です。穴のあいた部分と目の詰まった部分が繰り返されて、白一色の編み地に濃淡が生まれています。糸そのものの色だけでなく、向こう側の肌や影も、模様の見え方に加わっているようです。
細かな柄が全体に入っている一方で、服の輪郭は穏やかです。丸い衿ぐり、短い袖、身頃の裾。模様を眺めていた目が端へ移ると、一枚の編み地が服としてまとまっていることに、あらためて気づきます。
当時の投稿では「仕上げも綺麗」と書いていました。編み地そのものだけでなく、衿や袖口まで含めて一着なのだと感じたのだと思います。何年も前の作品を写真に残しておきたくなった理由は、そうした細部にもありました。

同じ一着を近くから。白い糸の間に、透かし模様の陰影が見えます。
模様を見ているとき、形を見ているとき
近くで見ていると、どうしても模様を追いたくなります。どこから繰り返しが始まるのか、透かしの間にどんな目が並んでいるのか。けれど写真を少し引いて見ると、今度は袖の長さや衿ぐりの開き、身頃との釣り合いが気になります。同じ服でも、見ている場所によって考えることが変わります。
このトップスは、Katagamiの「上級編サンプルトップス」と同じ形です。模様は異なります。実物の写真とサンプルの間にある、その「同じ形で、違う模様」という関係が、この一着をここで取り上げたきっかけです。
型紙には服の輪郭があり、編み図には目や段の並びがあります。実物ではひとつになって見えるものが、画面では別々に確かめられます。写真の透かし模様をそのまま再現する見本ではありませんが、服の形と編み地の関係を考える手がかりにはなります。
たとえば、袖だけを見ても、輪郭と模様は別の話です。袖がどのような形なのかということと、そこにどんな柄が入るのかということ。実物を眺めながらその二つを行き来すると、模様に目を奪われていたときには意識していなかった部分が見えてきます。
サンプルには前身頃・後ろ身頃・袖の三つのパーツと、編み図の設定が入っています。実物の一着を丸ごと写し取ったデータというより、形を画面上で扱うための見本です。写真に写っている仕上がりと、データとして持てる情報には違いがある。その違いも含めて、並べて見ておきたいと思いました。
糸を変えると、続きが生まれる
同じ形で別の一着を編むとしたら、糸や模様の選び方が変わってきます。白い透かし模様の印象を残すのか、もう少し目の詰まった編み地にするのか。形がひとつあるだけでも、考えられる方向はいくつもあります。
ただ、輪郭が同じなら同じ目数でよい、とは限りません。糸や模様が変われば、編み地のゲージも変わります。型紙の寸法と、実際に必要になる目数・段数をつなぐところには、試し編みした編み地の情報が必要です。
この作品に使われた糸の正確な銘柄や、編み機の機種、模様番号は確認できていません。元投稿にある糸や機種への言及も、そのときの推測です。写真からわかることと、作った人に聞かなければわからないことは、分けて残しておこうと思います。
糸に合わせてゲージを更新する話は、実際の試し編みと測定値がそろったところで、続きとして書ければと思っています。画面の設定だけでなく、どんな編み地になったのかも一緒に残せると、変えた内容が伝わりやすそうです。
今回は、二十年以上前に編まれた一着の記録です。作られたときのことは全部わからなくても、残っている服から見えることはあります。透かし模様や衿の仕上げを眺めていると、当時の「綺麗だな」という感想に、今も戻ってきます。
