編み機から外した、色糸の目印が入った一枚の布。作品の途中のようにも見えますが、この小さな編み地には、これから作るものの大きさを決める情報が入っています。
同じ六十目で編んでも、糸や模様、機械の設定が違えば、同じ幅になるとは限りません。その組み合わせで何目・何段がどれだけの長さになるのか。実際に編んで確かめるのが、ゲージのための試し編みです。
目数と段数を決めて、長さを測る
作者が使った説明書のニットリーダー用の方法では、六十目で編み出し、中央の四十目の幅と、目印の間の六十段の高さを測ります。編み出し全体の大きさと、測る区間の大きさは別です。端の影響を避けられるように、測るところのまわりにも編み地を残します。

ここでは、先に目数と段数を決めておき、編んだあとに何センチになったかを測っています。「十センチの中に何目あるか数える」とは、測り始める側が反対です。どちらも、目数・段数と長さの関係を調べることにつながります。
ニットリーダーを使う場合は、その機器の説明書で指定された目数・段数と測り方に合わせます。四十目・六十段という数字を、すべての機種に共通の決まりとして使うわけではありません。
測った長さを、欲しい幅へ
仮に、四十目の幅が二十センチだったとします。一センチあたりは、四十÷二十で二目。幅三十センチのまっすぐな編み地なら、計算上は六十目になります。
必要な目数 = 欲しい幅 × 測った目数 ÷ 測った幅
30cm × 40目 ÷ 20cm = 60目
数字は説明用の仮の例です。写真の編み地を測った結果ではありません。
段数も同じ考え方です。決めた段数の高さが何センチだったかを測り、欲しい長さに置き換えます。幅の計算には横のゲージ、長さの計算には縦のゲージを使います。
実際の作品では、とじる部分や模様の繰り返し、着けたときの伸び方も関係します。計算結果をそのまま全作品共通の目数にするのではなく、形や仕上げに合わせて調整します。
大きく測ると、何が違う?
専用の指定がなければ、十センチ四方の範囲で目数と段数を見る方法も使えます。必ずニットリーダー用の大きさで編まなければならない、ということではありません。
一方で、測る範囲を大きくすると、小さな測り違いが全体に占める割合を減らせます。同じ一ミリの違いでも、十センチに対しては一パーセント、二十センチなら〇・五パーセントです。これは、同じ測り違いがあった場合の比較です。大きく編めばすべて正確になる、という意味ではありません。
編み機は、同じ設定で目をそろえて編み進めやすい道具です。その一方で、糸のかかり方や模様、編んだあとの扱いでも寸法は変わります。測る範囲だけでなく、編み地をどんな状態で測ったかも一緒に考えます。
数字と一緒に、編んだ条件を残す
試し編みの記録には、糸、機種、ダイヤルの設定、模様、測定した目数と段数、その幅と高さを残しておくと、あとから見返せます。洗い、乾燥、形を整える作業をしたかどうかも、寸法の意味を知る手がかりになります。
この記事の写真は、当時の試し編みの記録です。測定前の仕上げ条件までは確認できていないため、写真から特定の完成寸法を保証することはできません。作品の寸法を決めるときには、その糸や作品に合う仕上げを含めて確かめます。
最初の一枚では、糸がどんな編み地になるのかを見るだけでも、次に考えることが増えます。柔らかさ、厚み、伸び方。そして目数と長さ。四角い布に残した記録が、帽子や服の大きさへつながっていきます。
