つくるヒント / 作品の記録

作品の記録 / 02

ひらに編んで、
靴下になるまで

模様を入れるために、平(ひら)に編む。
とじはぎを重ねて、分かってきたこと。

赤と淡い色の靴下の編み地。端の糸を残した、仕上げ待ちの様子。
2024年1月のInstagram投稿より。

編み終わった靴下が、とじはぎを待っています。赤い編み地と、淡い色の編み地。2024年1月のInstagramには、模様を変えながら編んだ写真と、「気がつけばはぎ待ちがだいぶ溜まってきた」という言葉を残していました。

編み機で靴下を作るとき、平に編んでから仕上げることが多いのは、模様を入れたいからです。あとでとじはぎをする手間はありますが、そのぶん、編み地でできることが広がります。

輪に編めるけれど、平に編む

ゴム編み機を使えば、編み機で輪に編むこともできます。最初から筒にできるのは便利です。ただ、輪にしたまま模様を入れようとすると、難しくなるところがあります。

平に編む方法を選ぶと、大抵の模様編みを取り入れられます。靴下だから輪に編む、と決めるのではなく、入れたい模様に合わせて編み方を選ぶ。自分の場合は、その自由さから平に編むことが多くなりました。

赤い靴下も、交差模様を変えながら編んだものです。当時は、三目交差を重ねると編み地がさらにきつくなり、ゲージを少し緩めた方がよさそうだ、と書いていました。模様を変えると、見た目だけでなく、編んでいるときの感触も変わります。こうしたことを試せるのも、平に編む面白さです。

編み機の上に並べた赤い靴下の編み地。縄編みの模様が入っている。

2024年1月の投稿より。茜染めの糸で、交差模様を変えながら編んだもの。

十足ほど仕上げるうちに

最初の頃は、とじはぎが面倒だと思っていました。編み機で編むところまでは進んでも、そのあとに仕上げが残ります。はぎ待ちがたまった写真を見ると、当時のその気分も思い出します。

けれど、十足ほど仕上げる頃には、たいして時間をかけずにできるようになっていました。自分の場合は、数を重ねるうちに、とじはぎへの感じ方が変わっていったのだと思います。

平に編んで模様を入れ、最後にとじて靴下にする。その一連の作業に慣れてくると、仕上げの手間も含めて、この編み方を選べるようになります。最初に面倒だと感じたことが、そのままずっと負担であり続けるわけではありませんでした。

針の動きで見る、すくいとじ

2024年1月には、すくいとじの手元を短い動画にも残していました。「すくいとじもなんやかんやで慣れた。」と書いた投稿です。完成したところだけでなく、針を入れ、糸を引いている途中が写っています。

写真では一つの面に見える編み地にも、端があり、つなぐための動きがあります。動画では、針が編み地に入るところと、糸を引いたあとの接合部を続けて見ることができます。どこをすくっているのか。糸を引く前と後で、端の見え方がどう変わるのか。仕上げの途中に目を向けると、出来上がった写真とは違うことが見えてきます。

ここに載せるのは、すくいとじの一場面です。始め方から糸始末までを通して説明する動画ではありません。次に触れるメリヤスはぎとは別の作業として、手元の記録を添えています。

約50秒・音声なし。2024年1月の記録を、通常速度と手元の一部分の0.5倍速で再編集しました。映像の「すくいとじ」の文字は元の記録にあるものです。

メリヤスはぎから、編み目が見えてくる

メリヤスはぎも、仕組みが分かってくると面白くなります。決まった順番を覚えて手を動かすだけだったところに、「どうしてここへ針を入れるのだろう」という意味が見えてきます。

それは仕上げだけの話ではなく、棒針編みを理解することにもつながりました。編み目がどうつながっているかが分かると、穴があいたところをどう直すか考えられるようになったり、ゴム編み止めの原理が分かったりします。別々の作業だと思っていたことの間に、つながりが見えてきます。

ただなんとなく、説明どおりにやっていたことにも、そうする理由がある。とじはぎを繰り返す中には、そうした知識が詰まっていました。靴下を仕上げるために始めた作業が、編み物そのものを知る時間にもなっています。

赤い糸で試した、メリヤスはぎの記録 →

工程の間にある、作り手の思い

模様を入れたいから平に編む。仕上げを重ねるうちに、編み目の仕組みが分かってくる。ひとつの靴下を作る中には、手順だけでは伝えきれないことがあります。どの工程にも意味があり、そこには作り手がこだわる部分があるのだと思います。

編み方の記録には、何目を何段編むか、どこで引き返すか、どうとじるかが必要です。それと一緒に、なぜその方法を選んだのか、やってみて何が分かったのかも残せたら。手順の間にあるそうした言葉が、作るときの理解を支えてくれる気がします。

Amibumiを開発したのも、そんな思いからでした。編み方の行間を、言葉で補えるものにしたい。模様を選んだ理由や、最初は面倒だった仕上げへの感じ方も、編むための指示と一緒に置いておけるようにしたいと考えました。

「往復編みでつくる靴下」のサンプルには、「履き口」「脚」「踵」「足」「爪先」「とじはぎ」の六つのまとまりがあります。編むための文章と図に加えて、言葉を添えられる形です。最後のとじはぎまで含めて、一足の記録として扱っています。

写真は当時の機械編みの記録で、サンプルは工程と言葉の関係を見るための別の見本です。写真の模様や使用した糸、機械の設定を再現したレシピではありません。ここでは、仕上げまでの工程と、そこに添える言葉をどう残せるかというところでつながっています。

はぎ待ちの靴下の写真を見ると、面倒に思っていた頃のことも、仕組みが分かってきた面白さも思い出します。出来上がった一足だけでなく、そこへ至るまでに考えたことも残しておきたい。それも、この靴下を作った記録の一部なのだと思います。

平に編む、制作の記録

Brother KH801で編んだ、一目ゴム編みの履き口からその先の編み地まで。残っている12本の映像を撮影順につなぎました。タイムラプスを含み、仕上げまでの全手順を網羅した実演ではありません。

約2分9秒・音声なし。この記事の作品写真とは別の、青い糸を使った制作記録です。

YouTube:平編み機で靴下を編む制作記録

一目ゴム編みの編み出しを詳しく読む · 輪に編む靴下の制作記録

仕上げを、別の角度から見る

「編み機のじかん」の編み解き / Amitokiでは、すくいとじで拾う場所と、裏に残る縫い代を3Dの模式図で比べています。この記事の実写を、半目・一目内側の特定方式のお手本として示すものではありません。

すくいとじ|半目と一目、裏に残る幅はどう違う?【編み解き】 ↗

「編み機の道具箱」では、別の靴下を「くるーる」で引き抜き仕上げにした記録も公開しました。仕上がりの厚みや、作者自身の好みから使い分けを考えます。

くるーるで靴下を引き抜き仕上げ|すくいとじ派が試してみた【編み機の道具箱】 ↗ · シリーズの動画一覧 →