平らに見える針床で、立体を編む
靴下のかかとを編んでいるとき、針床には横一列に針が並んでいます。けれど、できあがる部分は平らなままではありません。足首から足裏へ向きを変える、ふくらみのある形になります。2023年10月の映像には、その途中が残っています。黄色の見える編み地を支えながら、針を操作し、キャリジを動かしていく手元です。
全部の目を、同じだけ編まない
引き返し編みでは、すべての目を端から端まで編むだけでなく、途中で編む範囲を変えます。編むところと、いったん休ませておくところ。場所によって編まれる段数に差ができ、それが形につながっていきます。完成したかかとの丸みだけでは見えない、段の積み重ね方の違いです。
58目の輪から、片側の29目へ
今回の説明では、60目で編み出し、輪にするときにU字の端目をクロスさせて2目減らします。平編み機側29目、ゴム編み機側29目の、合計58目。足首を輪に編んだあと、かかとへ進みます。
足首を好みの長さまで輪に編んだら、ゴム編み機側の29目を休ませ、かかとへ進みます。作者の目安では60段ほど、長めが好きなら120段ほど編むこともあります。糸やゲージ、欲しい長さに合わせて選ぶ部分です。ここでゴム編み機側の端4目を別糸で取っておくと、休ませている間に目が伸びにくくなります。かかとは平編み機側の29目で引き返し編みをします。
9目を休め、11目を編み、9目を休める
平編み機側の左右から、針を1本ずつ前へ出していきます。この引き返し編みの操作では、出した針の目は編まれず、針に掛かったまま休みます。左右9目ずつを休め、中央の11目を編む「9・11・9」になったところで、編む範囲を戻していきます。
戻るときは、休ませていた針の目を順に編む範囲へ戻します。中央へ向かって編む幅を狭める部分と、そこから広げる部分がつながり、かかとのふくらみになります。平編み機側の29目すべてを編む状態に戻ったら、かかとは終わりです。休ませていたゴム編み機側を戻し、そのまま甲の部分の輪編みへ進みます。
目数ではなく、編む範囲が変わる
見た目には29目が針床に並び続けています。そのうち、今編んでいる目と、針を出して休めている目が変わっていきます。目を重ねて減らす減らし目や、新しい目を作る増し目とは違い、ここで変わるのは編む範囲です。
Amibumiで引き返し編みを考えるときも、編む範囲を狭めてから戻す、と捉えると手元と結び付けやすくなります。今回は平編み機側29目を9・11・9に分ける説明です。別の目数やゲージにも同じ数字をそのまま当てはめるものではありません。
形を作る操作と、編み地を支える操作
編み機の引き返し編みでは、目が外れたり、うまく編まれずに飛んだりすることがあります。錘を付けるだけでなく、編み地の様子を見ながら錘の位置を調整し、手でも引いて支えます。決まった段で一律に錘を動かすというより、今編んでいる部分がうまく編めるように補佐する感覚です。どの針を編むかという操作と、編み地を支える手の動き。その両方が、この映像に残っています。
始める側と、終わる側
当時の記録では、左右どちらから始めても手順は変わらず、終わるときのキャリジは開始時と反対側になると書いています。針を休める操作と戻す操作を追うときは、キャリジの位置も一緒に見返せます。
同じ引き返し編みを、つま先にも
かかとの投稿には「つま先も同じ」と記していました。実際に、別の記録にはつま先を引き返し編みで作っている映像があります。ただ、同じ操作を使うことと、同じ目数・段数でよいことは別です。足に合う形や大きさまで、この短い動画だけで決めるものではありません。
仕上げまで続く、靴下の形
かかとの立体ができても、靴下の作業は続きます。つま先をどう作るか、とじたりはぎ合わせたりする場所をどこに残すか。編んでいる最中の手間と、あとで仕上げる手間を行き来しながら、一足の作り方が決まっていきます。この映像は、その中のかかとに目を留めた制作記録です。
